夏の訪れを知らせてくれる朝顔、そのつるが天に向かってどんどん伸びています。小学生の頃、毎朝「何センチ伸びたか?!」記録していたことを思い出します。
さて、7月の一大イベントは何と言っても、「東京2020オリンピック競技大会」です。新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、昨年夏の開催日程から1年延期となり、いよいよ今月の7月23日~8月8日(17日間)、パラリンピックは8月24日~9月5日(13日間)で開催されます。
「近代オリンピックの父」と言われるピエール・ド・クーベルタン男爵は、フランスの教育者であり、古代オリンピックを復興させ近代オリンピックの基礎を築いた創立者です。
彼の墓石には、「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」という、オリンピックのあるべき姿(オリンピズム)が刻まれているそうです。
オリンピックはいつも時代時代の社会情勢(二度の世界大戦による中断や、東西冷戦によるボイコット問題等)に左右され、そのたびに「あるべき姿」が問われてきましたが、今なお、オリンピックは継続しています。それは、クーベルタンが土台を築いた「オリンピズム」という理想が、世代や国境を越えて共感を呼んでいるに他なりません。
私達も、こうしたオリンピックの理念を日々の様々な場面に活かしていきたいものです。
さて、アメリカのNASAが、宇宙船の乗務員を選ぶ時には、あるルールがあるそうです。それは乗務員の中に、人種、職業、性格、性別、趣味等、必ず異なる人を入れるというものです。これは、オッドマンセオリーという組織論から決められたルールです。
オッドマンセオリーの「オッドマン」とは、「奇妙な人」「風変わりな人」という意味です。ある基準だけに基づいて選ぶと、確かに優秀な人は集まりますが、皆同じような考え方の集まりになってしまう可能性があります。
宇宙船で何か緊急事態が発生した場合、皆が同じような考え方だと、パニックになりやすい。そこで、様々なタイプの人間を入れることで、様々なトラブルに対応できるようにしているのです。この話を聞いた時、「何と素晴らしい!凄い!」と感動しました。
違う価値観、異なったものの見方、考え方、感受性を持つ人の集まりであれば、事故に対する反応も異なり、誰かが冷静に対応してくれるということです。
オッドマンセオリーと似た話に、昔のユダヤの裁判では、満場一致の判決は無効になるという決まりがあったそうです。満場一致の判決だと、外部から強い圧力がかかっているか、或いは、熱狂の中にいて勢いで決めてしまっているという可能性が高いと考えるのだそうです。これまたなんと素晴らしい!
確かに組織を思い浮かべても、強い圧力をもっているリーダーの下では、部下は100パーセントそのリーダーに従ってしまいます。意見が無いわけではありませんが、反対すると自分の身が危ないから、たとえ、聞かれても自分の意見を述べません。
「リーダー研修」の中に、“チームの効果性とリーダーの役割・責務”を、ゲームで体験学習してもらうことがあります。5~6人のチームが5~6チームあると面白いです。そこでは、出来る限り色々なグループを編成します。例えば、女性だけ、男性だけ、同年齢、同役職、リーダータイプだけのチーム等、その中に必ず「混合チーム」を作ります。勿論、その時の状況下でのグルーピングです。
それぞれのチームが活動をし、最終的には競い合いになるのですが、さて、どんなチームが一番成果を上げると思いますか?・・・・それは何故でしょうか?考えてみて下さい。
このゲームの面白いところは、誰もが認める「優秀なチーム」が必ずしも勝たない、また、一見「頼りないチーム」も、決して弱いチームではない・・・。毎回予想外の結果に各チームは沸き立ちます。
優勝チームは、今まで殆ど「混合チーム」でした。“オッドマンセオリー”がしっかり現れます。しかし、それぞれのチームに優れたリーダーがいたら結果は別です。
同じ条件が揃っているチームは、メンバーの意見や価値感が同じ傾向に偏りますので、話し合いに時間がかかりません。たとえ、意見が分かれた場合でも多数意見が優先され、少数意見は活かされないことが多いです。答えも既成枠内で創造性がありません。
しかし、「混合チーム」は、元々違いがあるメンバーの集まりですから、話し合いが自然になされ、その話し合いのプロセスの中で、様々な発見があり、チームの効果性が上がります。
このゲームから受講者は、ダイバーシティ(多様性)の重要性とリーダーの役割と課題を学びます。シンプルなゲームですが、勝ったチームは活性化し、個々人のモチベーションがダントツ上がり、自信が言動に表れます。逆に負けたチームはとても悔しがりますが、自分達の課題を見つけることができます。
私達は、どこか“オッドマン的な要素”を有している人、例えば、若者のことを、“今時の若者は難しい”と避けたり、自分と違うタイプの人に苦手意識をもち、排除したり、また、意にそぐわない仕事を任せられたら、「ヤメル!」等という言葉の「刃」を突き付けたりすることもあります。ゆとりがある証拠ですね。
「ダイバーシティ」や「変化」は急務です。頭では分かっていても、違いを受け入れることはなかなか難しいことですが、それでは、組織も個人もエンパワーメントできません。
クーベルタンの名言に、「オリンピックで最も重要なことは、勝つことではなく参加することである。同様に、人生において最も重要なことは、勝つことではなく奮励努力することである。肝要なのは、勝利者になったということではなく健気に戦ったということである」とあります。深い言葉です。
現在のような答えのない「VUCA時代」、企業が求める人材は、かつての「協調型」から「自主的行動型」へと変化しています。企業や社会が最初から都合のいい理想型のメンバーを求めているようではいつまで経っても「組織」「個人」の成長はありません。
私達が力を発揮するということは、正解を出す(目標達成する)ことや、勝ち負けを競うことではなく、違う人々、違う意見をもった人々の話がいかに聴けるか、またそのような多様性の中で、「個」の可能性にチャレンジ(奮励努力と健気に戦う)できるかということだと思います。
さて、私の夏休みは、テレビでオリンピック鑑賞です。今からワクワクしています。世界中の一流のアスリートの素晴らしい競い合いから感動と勇気を得ることになるでしょう。
LOVE
植田亜津子