梅雨のシーズンに入りました。生命に恵をもたらす雨により、草木は一層鮮麗になっていきます。雨で沈みがちな気分は、アジサイやクチナシの花が癒してくれます。
 
 ここ数年、訪日している外国の方々を、あちらこちらで多く見かけるようになりました。
大きなキャリーバッグを引っ張りながら、楽しそうに話をしている観光客、ホテルのラウンジで真剣な顔をして商談をしていると思しき人、両手に大きな紙袋をかかえ、たくさんショッピングをしてきた人等、様々です。国も、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、幅広く、海外の方々と触れ合う機会は、当然のごとく、多くなりました。

 会話を交わすわけではありませんが、飛行機や新幹線や電車の隣に乗り合わせたり、道路で道を訊ねられたり、切符の買い方を聞かれたり等、普通に声をかけられます。その様な時は知っている言葉(単語)を駆使し、ブロークンでやり取りをします。
 自慢ではありませんが、私は母国語は得意ですが、それ以外は不得意です。映画を字幕スーパーなしや、吹き替えなしで観れたらどんなにいいかと、いつも思っています。よって、できるだけ、外国の方に話しかけられないように気を付けてはいるのですが、最近はそうもいかない場面に遭遇します。
 
 地下鉄で、座席に座っていた時のことです。隣の席に7~8歳位の欧米の可愛らしい少女が、居眠りをしながら私にもたれかかっていました。母親らしき女性が彼女を起こし、注意をしたのでしょう。少女は気まずそうな表情で、私に「ごめんなさい」と、たどたどしい日本語で謝罪をしました。私はとっさに首を横にふりながら「It's my pleasure」と笑顔で応えました。その後、少女と私は笑顔だけのコミュニケーションを何回も交わしました。少女が電車から降りる時、母親らしき女性は私に笑顔で会釈をし、少女は私にハイタッチを求めてきました。気持ちが通い合えたことをとても嬉しく思いました。
 
 ホテルのエレベーターで、外国の方と乗り合わせることがよくあります。乗る時や降りる時は、状況に合わせ、先を譲り合うことは、世界共通のマナーです。
 エレベーターを待っていた時のことです。シルバーグレイの髪の素敵なご婦人と一緒になりました。乗る時に「After you」と、先をゆずりましたら、彼女は笑顔で「Thank you for your kindness」と言葉を返してきました。彼女がエレベーターから降りる時、後方にいる私の方を見て、「Good Night」と手を振りました。とても温かな気持ちになりました。これがエチケット・マナーのもたらす魔法です。

 新幹線や飛行機で、隣の席に外国の方が座られることがあります。その方が観光か、ビジネスかは、着ている物や持ち物を見れば分かります。旅行者であることが分かれば、相手が先に降りるか、自分が先に降りるか、いずれにしても、お別れ時は、「I hope you have a wonderful trip」と言うようにしています。必ず最高の笑顔と「Thank you」が返ってきます。言葉が通じなくても伝わるものがあります。

 流暢な英語でなくても、多くを語らなくても、人の温かさに触れた時「日本に来てよかった」と、きっと思っていただけるでしょう。日本人としての「おもてなし」です。
 分からないからこそ、伝わるものがあります。「気持ち」に国の違いはありません。

 現在の私たち(日本人)に、生活の中における「思いやり」のやりとりが不足しているように思うのです。自分以外の他人に無関心であったり、自分の都合だけを相手に押し付ける利己的な人が最近増えてきているように思います。
 相手(周囲)への配慮や、優しさ、感謝等を、自ら発することから生まれるくる幸福感を味わいたいですね。

LOVE 

植田亜津子