いよいよ春本番、3月ですね。旧歴3月の呼び名である「弥生」は、元々は「いやおい」と読み、草木が益々生い茂るさまを表しています。陽光と柔らかな春雨によって、多くの植物が萌え出る時季であるため、この名前が付いたそうです。3月はその他にも「花見月」「花月」「桜月」といった美しい別名があります。
冬ごもりから目覚めるのは植物だけではありません。鳥や虫達、私達もだんだん世界が賑やかになっていきます。
先日、興味深いNHKの番組「百聞はジッケンに如かず」を見ました。ご覧になった方もいらっしゃると思います。日常の何げない疑問を科学の視点から解き明かす実験バラエティ番組です。内容は「外見」により、人間の行動や心理がどのように変化するかを、東京大学大学院の鳴海拓志准教授の監修で、科学的な実験を通じて、検証していくものでした。
興味深かった実験を3つご紹介します。実験の1
つは、小学3年生28名の握力、背筋力を図り、体力が均等になるように14名ずつを2チーム(Aチーム vs Bチーム)に分け、綱引きの対決をします。Bチームの方が身長が高い児童が多くいました。3本勝負を2回戦行います。1回戦の結果は、Bチームが3連勝し、Aチームは完敗。その後、負けたAチームに消防士の活躍映像を見せ、消防士の制服を着せ、2回戦「Aチーム(消防服)vs Bチーム(体操着)」に臨みます。Aチームはその後も2敗しましたが、アッサリは負けませんでした。最後3本目の勝負で遂に1勝しました。テレビ観戦の私も力が入りました。
実験で実証されたことは、消防服を着たことで、消防士という役になりきり身体的能力が引き出され、自信が高まり、筋力を効果的に使えるようになったのです。また、綱引きの結果だけでなく、その後の筋力測定では、実際に握力・背筋力が向上しました。「外見の変化が自己認識を変え、体力やパフォーマンスの向上に影響を与えたことが科学的に実証されました。
続いて、「外見が、人の“内面”にどのような影響を与えるか?」の検証実験を同じく、「Aグループ(消防服)vs Bグループ(体操着)」で行いました。各チーム一人ひとりが、別の部屋で実験を行います。実験スタッフが数本入ったペン立てをわざと落とします。その場にいた児童が「スタッフの指示無しでペンを拾うか」を観察します(実験室は縦長で、スタッフと児童の席の距離は離れ、助けに行きずらい場面設定)。Bチームは、殆どペンが落ちた事に無反応で、1人だけが手伝いをしました。消防士の制服を着たAチームは、ペンを落としたことに多くの児童が反応を示し、14名中5名がペンを拾いました。消防士の制服を着ることで、役割意識や周囲の期待をキャッチする力、助け合いの精神や責任感が高まる等、外見が「意識」「内面」「行動」に影響していることが実証されました。
3つ目の実験は、将棋教室に通う中年男性3人を対象に、「外見の変化が“知力”にどれほど影響を与えるか?」です。
将棋のように高い集中力と戦略的思考が求められる競技で、「外見の変化」がどのように結果に影響するかの実験です。先ず、3人の将棋の実力をAIと対戦し測定をし、それぞれの段位より、2ランク上の強さのAIと対戦します(普通は勝てないそうです)。
その際、3人にはそれぞれが憧れる名人棋士の着物を着用してもらいます。更に、対局場の雰囲気・環境をプロ棋士が実際に対戦する会場の様にリアルに再現し、加えて、それぞれ憧れる名人棋士が食べる「勝負めし」も用意し「プロ棋士になった気分」を高めます。 ここでは、AIとの対局時の思考力や判断力の変化の測定と、環境の変化が実際のパフォーマンスにどのように影響するかを検証しました。
気になる対局結果ですが、先ず、1人はAIに対する「最善手」の割合が向上しました。もう1人は格上のAIに勝利するという快挙を達成しました。
この実験が示したことは、名人棋士の着物を着ることや、対戦場のリアルな環境づくり、や食事の再現で、棋士になった意識が上がり、集中力・判断力が高まり、対局の精度が上がったのです。更に、勝負めしを食べることで「勝てる!」という心理効果が働き、より冷静な思考でAIと対局ができたということです。この結果から、「外見の変化が、知的パフォーマンスを向上させる」ことが明らかになりました。
今回の実験で、外見の変化が自身の「体力」「知力」「内面」に影響を与えることが検証されました。例えば、医療従事者が白衣を着ることで「患者を救う責任感」、警察官が制服を着ることで「市民を守る意識」を高める等、職業時の制服が果たす心理的効果は能力発揮を大い助けることが示されました。
私達の日常も、「仕事着」「勝負服」「フォーマルな場でのスーツ」など、服装によって、気持ちが変わることは経験しています。
多くの企業がダイバーシティ推進で「職場の身だしなみ」の規制をなくしています。自由になったから何でもよいのではなく、自由になったからこそ、自身のエンパワーメント、仕事のパワーマンス向上に、外見力を見方にして、多いに能力発揮をしていただきたいです。
さて、全国の桜開花予想が発表されました。
“桜は花に顕われる(さくらははなにあらわれる)”好きな言葉です。花が咲く前の桜の木は、他の雑木と一緒で目立ちませんが、花が咲くと、初めて桜の木だと認識され皆に愛されるという意味の言葉です。ビジネスでも、普段は平凡に仕事をしていても、得意分野や、ある機会、ある場面で、キラリと才能を発揮する人がいます。「ビジネスマナー・インストラクター」はそうあって欲しいです。
LOVE
2025年3月1日
植田亜津子