9月に入りました。酷暑の8月でしたが、皆様お元気にお過ごしでしょうか?
気象庁が発表した長期予報によりますと、9月は厳しい残暑が続く見込みで、東日本や西日本を中心に猛烈な暑さとなる日もあるそうです。引き続き、熱中症だけでなく「夏バテ」にもご注意ください。
 
 先月、第105回/夏の高校野球(全国高等学校野球選手権)が行われました。酷暑の阪神甲子園球場で、全国49校が17日間に亘り戦いました。
 優勝決定戦は、史上7校目の連覇を狙う仙台育英(宮城)と、107年ぶりの優勝が期待される慶應義塾(神奈川)との戦いで、今年は慶応義塾の優勝で幕を閉じました。

 優勝した慶応義塾の森林貴彦監督は「理想はノーサイン」とし、個人の判断力に重きを於いたチームづくりをしました。それが甲子園の大舞台で花開きました。
 監督が目指したものは、監督と選手が対等な「大人のチーム」。仲間や対戦相手、審判、ルールを尊重し、失敗を恐れず全力で戦うスポーツマンシップの大切さを選手に説き、
「“勝ち”にも“価値”にもこだわる」という方針で、勝利だけではなくフェアプレー精神の“価値”も大切にしました。それが、慶應義塾野球部が大切にしている教えの「エンジョイ・ベースボール」という信念なのでしょうか。
 「エンジョイ・ベースボール」とは、髪型の自由や個人の練習を重視するなど、選手の自主性を重んじた慶應スタイルとして浸透し、古くから提唱されている信念とのこと。
 また、野球は上から押し付けるものではなく、監督の教えが絶対ではなく、選手自らが考えながら練習に取り組む。このスタイルが試合でも堂々とプレーできている要因であったと思います。
 これから「エンジョイ・ベースボール」をモットーにする学校も増えてくるでしょう。

 仙台育英にも共通点があり、須江航監督は、選手の個性を伸ばすことに力を注ぎ、監督自身「監督は相談役」であることを肝に銘じてきたそうです。
 頭ごなしに指導するのではなく、“1対1”の関係で選手の話に耳を傾けることを心がける。選手を一律に育てるのではなく、各自の能力を伸ばすために個別の練習を重ね、長所や短所に応じたトレーニングを積ませ、競争の中でレベルを上げていったそうです。
 昨年は東北勢として初優勝し、今年も決勝まで勝ち進めたのもそうした取り組みのたまものだと思います。
 また、須江監督は敗戦後のインタビューで「慶応は技術やフィジカル等、現代野球に必要な要素が揃っていて、このチームに負けるならしかたない。慶応は勝者に相応しい、と思いました」と話していました。「試合後、選手たちは、ぼろぼろ泣いていましたが『負けた時に人間の価値が出るから、どこで負けても全力で相手に拍手を送って欲しい』と、以前話したことを守って、選手達は、一生懸命に拍手をしていました。その姿は自分の誇りです」と選手を称えました。ご立派ですね。
 変化は選手たちの髪型にも表れています。慶応義塾に加え、4強の土浦日大(茨城)
8強の花巻東(岩手)。春夏連続出場のクラーク記念国際(北北海道)も、丸刈りを強制していないといいます。
 日本高校野球連盟などの全国調査では「長髪も可というチーム」が、5年前は14.2%、今年は59.3%にまで増えたそうです。一律のやり方を押し付けず、多様な個性を認め合うチームづくりが主流になりつつあります。

 多様な個性の躍動と、選手の自主性を尊重し、「個の力」を引き出す、新しい高校野球の姿を示す大会となりました。夏の甲子園を沸かせた球児たちの躍動が、社会のあり方を示唆しているようにも見えました。

 2023年夏の甲子園は、高校野球が大きく変わる変革の年となったと思います。今後の変革のスピードは速いでしょう。どのように変わるか、動向に注目したいと思います。

 管理者研修で、「“1on1”ミーティング」「対話型管理者」「“心理的安全性”の高い職場づくり」等の学習時、できない理由ばかり発言している管理者は、高校生に負けていますね。
また、多様性の時代、髪の色は?ツメの色は?マスクの色は?等と言ったり、言われているようでは、いつまでたっても「個の自律」はあり得ません。
 私達こそ、「“勝ち”にも“価値”にもこだわる」、“大人の職業人”“大人の職場”“大人のチーム”への変革が求められています。

LOVE
植田亜津子