若葉がピカピカ輝き、初夏を感じる爽やかな季節になりました。
 ゴールデンウィーク後あたりから、新しい環境に適応できないことに起因して、心が不安定になってしまう「五月病(ごがつびょう)」を発症する新人がいますが、ここ2~3年は新社会人だけでなく、異動先に馴染めず悩むベテランが、増えてきているように思います。先日もリーダークラスの受講者から、異動先での仕事に馴染めず、その苦しい胸の内を聴いたばかりです。

 レターNo.116(2023年2月1日)「内は福、外は鬼」でも触れましたが、日本はなぜか「新参者」を歓迎しない雰囲気があり、また「新参者」を少し下に見る傾向というか、習慣があるようにも感じられます。こういうこともあり「新参者」は、そこに馴染むまでに時間がかかることを覚悟しなければなりません。
 馴染めないのが“普通”であると、自分に言い聞かせつつ・・しかし、そうとばかり言ってはいられません。ガマンしたり、受け身で慣れるのを待つのではなく、戦略的に新しい環境に馴染んでいくための努力も必要です。

~どうする新参者!~

1.言動は少し控えめに「普通の真面目な人」という印象を与える
 あなたがどんなに以前の職場で「仕事がデキル人」であったとしても、そうでなかったとしても、異動先では新参者です。「郷に入れば郷に従え」、先ずは異動先の職場のルール・マナーを守りつつ、言動は少し控えめに「普通の真面目な人」という印象を与えましょう。なぜなら、その環境に長くいる人たちにとって、デキル新参者や、かっこいい新参者は、自分の立場を脅かすライバルと認識され、嫌われる危険性があります。
 過去の自分を踏襲しようとしたり、デキル自分をアピールしようと焦って、頑張り過ぎないように。いくつになっても、変化の時は“初心に返る”。

2.相手の予測を上回るスピードで動く
 人に信用されるための一番の近道は、何でも「すぐやる」ことだと、私は思っています。事実、相手の予測を上回るスピードで動くと、それだけで一目置かれたり、心の距離が縮まったりします。こんなシンプルで強力な武器は、他にはありません。
 新参者は、知らないことが多いので、行動が一歩遅れがちになりますが、自分ができることや、時間のかからない小さな仕事等を、スピーディに行うたけで、周囲の見方はガラッと変わってくるはずです。
 私がその真理に気付いたのは、若かりし頃の上司の仕事対応の速さにありました。電話の折り返しも、問い合わせの返答も、とにかく仕事全般、企業内外、人間関係の上下に関係なく全て、対応が速いのです。いつも感動していました。対応の速さは、相手への敬意表現につながることをその時に学びました。

3.「忙しい人」にこそ、頼ってみる
 新参者は“仕事を早く覚えたいのだが、聞く人がいない”とよく言います。
 一番よい方法は、「忙しい人」に頼ってみることです。“忙しい人に声をかけるのは申し訳ない”“下手な質問をしたら一蹴されてしまう”等と、臆してしまいがちですが、よ~く考えてみましょう。忙しい人は、仕事が「できる人」であることが多いです。プレイヤーとして優秀だから、様々な仕事がその人に集中するのです。しかも、「できる人」に集まって来るものは、仕事だけでなく、情報も、人も、権限も集まります。
 忙しい人のアドバイスは、ポイントを突き、要領がよく、例えば、「これだったら、〇〇さんに頼むといいよ、つないでおくから・・」等と言った具合で、自分が考えていた以上の回答が返って来たり、思いも寄らないアイディアが聞けたり、何より、こちらの仕事がスピーディに進み、モチベーションがスパイラルアップしていきます。
 反対に、忙しくない人に相談すると、「ちょっと考えてみる」等と言われ、ずるずると時間だけが引き延ばされ、時間がかかった割には、アドバイスの内容は大したことはなく、仕事がサクサク進みません。気持ちが悶々としてしまいます。
 しかし「忙しい人」への声かけはタイミングが必要です。相手の動きをよく観察し、例えば、ランチタイムの前後等に「〇〇さん、ちょっとアドバイス頂きたいのですが、これを〇〇したいと考えていますが、どう思いますか?」等と、軽く話しかけてみたり、「メールで、一言だけでよいので、ご意見ください」等、相手に負担をかけず、直ぐに反応しやすい形で意見を求める等、コミュニケーションの取り方は工夫しなくてはなりません。忘れてはならないのは、頂いたアドバイスには、御礼と感謝の言葉、そして結果報告を忘れずにすることです。出来ているつもりが、意外とできていないですよ。
 
 変化を成長のチャンスととらえ、上記3点を意識して、やってみましょう。気が付けば、職場の中心人物になっているかもしれません。

 最後に、環境に馴染めない理由が“ハラスメント”で、精神的に追い詰められていたり、過剰なストレスがある場合は、先ずは、相談すべき人に、今の状況を全部聴いてもらうことです。とにかく全部吐き出しましょう。もう一つは、そこから離れること。我慢していれば、心が、身体が、壊れてしまいます。「相談したり」「離れる」ことは、恥ずかしいことでも、悪いことでもありません。可能な限り、公式な形で「離れる」ことがベターです。ガンバレ新参者!

LOVE
植田亜津子