レターNo.138「コミュンケーションにおける『承認』の威力」(2024年11月5日)

 冬の足音が聞こえてきました。インストラクターの皆様はお元気でご活躍のことと拝察申し上げます。
 今月はレターが遅れてしまいごめんなさい。植田、元気に生きています!出張続きで、パソコンから遠ざかっておりました。ごめんなさい。

 さて、研修の場で受講者から「上司は私のことを知らないです」「私は期待されていません」等の発言を聴きますと、“これはまずいぞ”と思います。
 今回は、部下や後輩をたくさんもつ皆様と、その辺を一緒に考えてみましょう。

 相手の話を「聴く」トレーニングを、コーチング研修では行いますが、5~6分の対話レッスンの中でも、聴き手役(コーチ)が、話し手よりたくさんしゃべってしまうといった失敗事例は少なくありません。実は、黙って相手の話を聴くことは、簡単そうで、とても難しいことなのです。黙って話を聴くことは、職場での通常の会話や、プライベートの会話の中でこそ必要です。
 私達は毎日、特別に意識せずに周囲とコミュニケーションを取っています。例えば、相手の話している内容と、自分の思いが少し違えば、直ぐさま自分を主張し、あっという間に話を乗っ取ってしまいます。また、忙しい時は「今忙しいから、後で・・」等と、話を聴きません。このように、常に「自分がしゃべりたい欲求」、言い換えるなら「自分を承認して欲しい欲求」に私達は抗うことができず、自分中心にしゃっべってしまう傾向にあります。
 対話中に、部下の話を最後まで聴かなかったり、部下の話を自分の方向にもっていったりすると、「上司は私の話を聴いてくれない」、「私を認めてくれてない」等と、不満感や不安感、孤独感を募らせます。
 このように無意識に行っている「自分語り」を止めなくてはなりません。どうすればよいでしょう!それは、意識的・積極的に「黙る(沈黙する)」ことです。

 「黙る(沈黙する)」という行為は、受け身でマイナス的な印象を受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、「ここは自分がしゃべる番ではない」と自分に言い聞かせ、「黙る」ことをすれば、その行為は「主体的行動」となります。このことこそが、「部下の話を聴く」ために大切なポイントなのです。
 相手の話を聴く場面で「主体的に黙る」ことができる人は、相手から好かれます。相手の話を黙って聴くことは、より能動的に相手を受け入れ、相手の承認欲求を満たす行為となります。それによって、相手の脳の中から、報酬系物質が分泌され、話を聴いてくれた人を好きにさせます。併せて黙って話を聴いた、上司自身の評価を上げます。
 人は自分のことが大好きだからこそ、「自分のことを知って欲しい」「他人から認められたい」という承認欲求が強いのです。相手の承認欲求を刺激する人が、相手との信頼関係を築くことができます。
 相手を承認する方法は大きく分けると5つに分類されます。

☆-1. 存在承認・・・・相手の存在そのものを認める
 存在承認は一番基本的な承認です。相手がそこにいることそのものを認めるものですが、ただ、意外とこれが難しいのです。
 例えば、「〇〇さんお疲れ様です。仕事はどんな感じですか?」等、名前を入れて声をかけてみましょう。特に仕事に行き詰まったメンバー、キャリアの浅いメンバーに対してはこの存在承認は効果的で、「安心感」を与えることになります。

☆-2.感情承認・・・・相手の気持ちをありのまま認める
  Aさん・・「毎日営業していますが、契約が取れなくて、辛いです」
  私・・・・「営業辛く感じているんだね」
 このように、相手の言った感情の部分の言葉を繰り返し、相手の思いを受け止め共感してあげましょう。共感してくれた相手に部下や後輩は心を許します。

☆-3.行動承認・・・・プロセスや努力
 これは相手が行った行動そのものを承認することです。行動といっても、結果や成果のことではありません。普段の行動や、成果に向けた行動の中にある努力を認めることです。
 ◎「Bさんは、いつも会議の時、皆の意見をまとめてくれていますね」

☆-4.結果承認・・・・結果や成果を認める
 ◎「先月に比べて新規顧客への訪問件数が20%アップしているね」
 ×「先月に比べて新規顧客への訪問件数を20%もアップさせ、偉いね!」
 ×の回答はどこがよくないのでしょう。分かりますか?!それは評価しているからです。 評価ではなく、事実をナレーションして認めることが大事なのです。相手の行動や結果を認めます。

☆-5.意見承認・・・・物事に対する意見や考えを認める
 相手の意見に対して、賛同や同意ができない時に、相手の意見を否定せずに、承認します。
 ◎「そうか、私はこう思うけど」、「それは新しい考え方だね!」
 ×「いや、それは違うんじゃないの!」
 意見が違う時、「そうじゃなくて!」等と、つい相手を否定する言葉を使いがちですが、「心理的安全性」が下がると、次から発言や意見、アイデアが出なくなります。
 意見承認は、先ずは、「あなたの意見は確かに受け取りましたよ」というメッセージを相手に伝えることです。相手の意見を否定しそうになった時は、気を付けましょう。

 部下や後輩は、常に承認されることを求めています。それは人が潜在的にもっている基本的欲求です。承認は「ほめる」ことではなく、相手の変化や成長、成果を観察したことを言葉にして伝える重要なコミュニケーションです。
 人間は答えが分かっていても自信がないと前へ進めないことが多いです。他者に認めらることで、安心して行動に繋げることができます。“私は受け入れられている”と思うだけで一歩前に進むことができます。相手に本物の自信を抱かせ自立の一歩を踏み出させる「承認」は相手の成長を支援する大切なコミュニケーションです。 
 因みに「会話」と「対話」の違いは分かりますか?「会話」は話すこと、「対話」は聴く事が中心です。

 寒くなってきました。「こころ」も「身体」も風邪をひかないよう、温かくしましょう。

LOVE
植田亜津子

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