レターNo.137「『私を、みんなの前でほめないでください!』・・ハテ?!」(2024年10月1日)

 本格的に秋が到来しました。「スポーツの秋」「芸術の秋」「読書の秋」「収穫の秋」、数ある「秋」の中でも、日々の暮らしの中で実感しやすいのは「食欲の秋」です。
 長く続いた猛暑からやっと解放された今、スーパーマーケットの店頭には、秋の味覚の、キノコや果物、魚介類と、美味しい食材が盛りだくさん並んでいます。見ているだけでもワクワクします。新米はこれからのお楽しみ。物価高になってきていますが、旬の食べ物は、比較的お財布に優しい上、栄養価も優れた自然の恵みです。感謝を忘れず頂きましょう。

 さて最近、研修担当者や、管理職の皆さんから、「Z世代から“人前でほめないでください”と言われるのですが・・・」という言葉を耳にします。
 『先生、どうか皆の前でほめないで下さい、いい子症候群の若者たち』(2022東洋経済新報社)の著者である、金間大介先生が、「現在の大学生の多くは、能力の面において自分はダメだと思っています。このような心理状態のままでほめられると、ダメな自分に対するプレッシャーが大きくなる・・・」とおっしゃっています。
 「人前でほめられることは、それを聞いていた人に、自分の印象を強くさせてしまう。それが恐いのです」と、金間先生はこのような学生達を『いい子症候群』と名付けました。 
 研修の受講者の中にも、同じような傾向の人が激増しています。
 ・人前でほめられるのが苦手です。むしろほめないで欲しい。
 (ちょっと前までは『私はほめられて育つタイプです!!と言っていたのに・・』) 
 ・皆と同じでいたい、昇進・昇格したくない(リーダー・管理者になりたくない)。
 ・このままでいい、目立ちたくない、埋もれていたい・・・等。
 この傾向は、Z世代に限った話しではなく、幅広い層に広がってきているように思います。お仕事の現場は大変です。

 「インポスター症候群」という言葉を聞いたことがありますか?
「インポスター(Imposter)」とは「詐欺師」や「ペテン師」という意味です。インポスター症候群とは、仕事や業務で成功しているにもかかわらず、自分を過小評価して否定的に捉える心理傾向のことです。せっかくチャンスを与えられてもプレッシャーを感じ、「私はとても無理です」と過剰に反応しまう、等です。思い当たる方はいませんか?キャリア形成上に影響が出てきます。
 
 この症候群は、周囲からみたらハイスペックで、極めて優秀な人に多いのが特徴とも言われています。学歴も高く、キャリア的にも周囲から憧れられている地位にある人、それも女性に多くみられると言われています。
最近は、映画の「ハリー・ポッター」シリーズで有名なエマ・ワトソンや、ハリウッド女優のシャリーズ・セロン、元米国大統領夫人ミッシェル・オバマ等が、この症状だったと公表して話題になりました。古くは夏目漱石や、アインシュタインも「自分に自信がもてない」と周囲にもらしていたそうで、インポスター症候群だっだのではないかとも言われています。

 また、(株)ヴィエリスが2021年に発表したデータでは、丸の内・大手町に勤める会社員男女各110名のうち、インポスター症候群の症状に当てはまる人は、男性が半数、女性は6割にも。また、自分のことをインポスター症候群だと自覚している人は、男性が5人に1人、女性は3人に1人。男女合わせれば、4人に1人。多いですね。本当はできるのに、リスクから逃げる「いい子ぶりっ子」は、周りに結構いるのでは?!

 誰もが認める実績に対し、「活躍しているね」「いい仕事しているね」「凄く頑張ったね」等と評価されると、逆に“過大評価されている”と受け止めて不安感が起こり、自分の実力や努力を過小評価するということがあれば、インポスター症候群的な考え方が隠れているかもしれません。あなたは強い責任感や完璧主義的なところがありませんか?
 症候群の傾向にあると思われる方は、私が考える克服法を2つご提案しますので、ご自身の思考の「くせ」克服に役立ててください。
 
 ①意識的に「リフレーミング」する
 物事のとらえ方を、別の枠組みから見直すことを「リフレーミング」と言います。
例えば、「失敗」→「成功するための課題を見つけることができた」という枠組みで捉えれば前向き(ポジティブ)になります。自分の思い込みをリフレーミングすることで、視野が拡がったり、挑戦意欲が高まったりします。因みに私は、失敗した時“失敗は明日へのリハーサル”と考え、次は成功しようと前向きに頑張ります。

 ②「完璧主義さん・いい子ぶりっ子さん」さようなら
 あなたの「心のものさし」の目盛りは「0点」or「100点」、「Yes」or「No」だけでは? 無意識に、自分自身がつくった「自分のルール(拘り)」に、縛られていませんか?圧をかけていませんか? 
 「間違ったら恥ずかしい!」「これはこうしなくてはならない!」「これはこうあるべき!」等の「自分のルール(拘り)」は、自分だけではなく、周囲にも求めていませんか?
 今は答えのない時代です。「先ずはやってみよう!」「やってみてから考えよう!」「皆の意見を聞いてみよう」「100点でなくてもOK、50点でもOK」位の気持ちを持つと、世界が拡がり、気分が楽になります。
 また、「完璧主義さん・いい子ぶりっ子さん」は、出来てないところに目が行きがちです。先ず、自分や他人の出来ているところに、目を向けましょう。出来ていることがたくさんあることに気づき、「私(私達)って、結構いい感じ~」と自己肯定感が上がっていきます。「完璧主義さん・いい子ぶりっ子さん」に別れを告げると、心も身体もほぐれます。

 上記2つに共通していることは、ネガティブな気持ち(思考)をポジティブな言葉に変換しています。ポジティブな言葉はポジティブな行動に結びつきます。
 言語学の研究者の調査で、興味深く面白いものがあります。
私達日本人は、「虹の色は何色?」と聞かれれば、迷わず7色と答えます。学校でも教わりました。しかし、アメリカ人は「6色」と答えるそうです。ドイツでは5色、インドネシアでは4色、台湾では3色と認識されているとか、それで驚くのはまだ早いです。南アジアのバイガ族は、虹の色は2色と答えるとのこと。なぜなら、バイガ族には色を表す言葉が暖色と寒色の2種類しかないからです。
 空に架かる「虹」は同じなのに、なぜ、国や地域によってこんなに違いがあるのでしょう。答えは、それぞれの「言葉」が違うからです。つまり、言葉がないと、虹の色さえ減ってしまうのです。言葉によって、「虹」という世界共通の現象すら変わってくるのです。

思考に気を付けなさい、それはいつか言葉になるから
言葉に気を付けなさい、それはいつか行動になるから
行動に気を付けなさい、それはいつか習慣になるから
習慣に気を付けなさい、それはいつか性格になるから
 性格に気を付けなさい、それはいつか運命になるから 

 

 上記は、マザー・テレサの名言です。言葉を変えると、運命まで変わっていくと、私達を導いて下さっています。なぜなら、自分自身の言葉が自分の世界を作っていますから、当然、言葉を変えれば自分の世界が変わります。
 もし、生きづらいことがありましたら、言葉を使ってその世界から抜け出せばよいのです。 本屋さんには既に来年の手帳が並んでいます。テパートでは、クリスマスケーキやおせち料理の注文を受け付けています。
 短い秋を堪能しましょう。ウーマン肥ゆる秋! 

LOVE
植田亜津子

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