レターNo.136「『江戸しぐさ』から『心配り』の重要性を学びましょう」(2024年9月1日)

 9月に入りました。9月1日は、昔から「二百十日」と言われ、立春から数えて210日目に当たります。季節の移り変わりを知らせる雑節(日本で生まれた独自の季節の指標の一つ)で、昔から農家の人々は厄日として警戒してきました。稲の実りを迎える大切な時季にもかかわらず、台風の爆風や豪雨によってお米が不足してしまうことが多々あったようです。
 よって、9月1日は「二百十日」の風を鎮め、豊作を願う行事やお祭りが日本各地で受け継がれています。そういうことから「9月1日(二百十日)」は「防災の日」となったのです。
 正に今、台風10号により九州・近畿・中部地方に被害が出ています。お米不足も問題になっています。皆様は大丈夫ですか?

 さて、私は電車通勤をしていますが、電車の中を観察していますと、だいたい約90%の人がスマホを観ています。目の前にお年寄りが立っていても気づきません。また、歩道を歩く半分位の人がノロノロと「スマホウォーク」です。会社に行くのにグーグルマップが必要?! 「もしもし、あなたの後ろが渋滞してますよ!」と、注意したくなります。
 また、酷暑の日中は、男女共日傘をさしています。すれ違いの時は、どちらかが早目に日傘を傾げなければぶつかります。お互いに早めに傘を傾げ、笑顔ですれ違いができれば優等生!心は平和です。しかし、殆どがすれ違い時、キリギリに片方が傾げます。まるで駆け引きしているように! 傾げても、相手方から「ありがとう」の一言があればよいのですが、殆ど無視。細い通路(例えば新幹線の通路)のすれ違い時も同じで、前方から人が歩いて来ていることが分かれば、早目によけて相手に通路を譲ります。そんな時は、相手側も配慮に対する「感謝の会釈」があります。最近は利己的な人が多く、残念ながら周りに対する「思いやり」「心配り」「感謝」の気持ちが伝わる言動(しぐさ)がありません。

 「江戸しぐさ」という言葉を聞いたことがありますか? 江戸時代の人たちが実践してきた人間関係を平和にする「しぐさ」です。
 今回はたくさんある「江戸しぐさ」の中から「10のしぐさ」をご紹介します。

☆傘かしげ

雨の日に互いの傘を外側に傾け、相手に配慮してすれ違うこと。

☆肩引き

狭い道を歩いている時、すれ違い時にぶつからないよう左肩を路肩に寄せて歩くこと。

☆時泥棒

江戸の商人は時間を大切にしました。失った時間は取り戻せないからです。断りなく相手を訪問したり、約束の時間に遅れる等で相手の時間を奪うのは重い罪(十両の罪)に当たります。

☆うかつ謝り

例えば、相手に自分の足を踏まれた時に、「すみません、こちらがうかつでした」と、自分が謝る。例え被害を受けても自分の注意のなさを詫びます。雑踏でのトラブルを避ける対応。

☆七三の道

往来は天下の公道。道の真ん中を歩くのではなく、自分が歩くのは道の3割にして、残りの7割は緊急時などに備え、他の人のために開けておくこと。

☆こぶし腰浮かせ

乗り合い船(バスや電車)等、少しでも詰めて多くの人が座れるようにする譲り合いの精神。後から来る人のために、こぶし一つ分腰を浮かせて席を作ること

☆逆らいしぐさ

年長者にしてはならない態度。年長者には素直に従う。「しかし」「でも」と文句を並べ立てて逆らわない。人間の成長にもつながる。

☆喫煙しぐさ

「喫煙禁止」などと張り紙がなくとも、非喫煙者が同席する場では喫煙をしない。相手が吸わなければ吸わないのが基本。

☆足組しぐさ・腕組みしぐさ

立場が違っても相手に敬意をもって接するのが、江戸住人の基本。足組、腕組みは衰運の印と言われた。

☆駕籠止めしぐさ

駕籠(かご)に乗って直接玄関先まで乗りつけない。少し手前で降りるのが謙虚な態度。力をひけらかさない江戸の心配り。

 いかがでしたか? 江戸っ子は「粋」でクールですよね。
 もしかしたら、「なぁ~んだ“当たり前の行為(しぐさ)”じゃあない」と思われた方もいらっしゃたかもしれません。しかし、残念ながらこの“当たり前の行為(しぐさ)”」が、現代人から消えてしまいました。つまり、かっこ悪い日本人が増えてきています。

 江戸時代は、260年以上もの間、経済の繁栄と戦争のない平和がもたらされた時代です。そこには江戸商人のリーダーたちが築き上げた、よりよく生きるルールのようなものがありました。その基本は思いやりの心(惻隠の情)を持って、皆が仲良く、平和の下で共に生きるために争い事を少なくし、人に対する言葉遣いやしぐさにも気を配るというものです。それが、次第に江戸の町に住む人たちにも浸透して行ったのです。
 このような武士道にも続く日本の心、特に江戸ならではの心映えが、後に芝三光(しばみつあきら)師(江戸時代から6代にわたって続いた家系。曽祖父、祖父が「江戸の講」の講師)によって「江戸しぐさ」と名付けられ伝承されています。

 これらの「先人」の実践していた「心の在り方」や「しぐさ」は、いじめや争いが多発している現代の私たちの日々の生活において、大切で必要なものです。

 さて、ご自宅の防災対策は整っていますか? 非常食やお水の賞味期限は? 避難場所やハザードマップの確認も忘れず行っておきたいところです。「もしも」における心構えを再確認しましょう。
 残暑はいつまで続くでしょう。夏のお疲れが出る頃です。ご自愛くださいね。

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植田亜津子

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