レターNo.116「内は福、外は鬼」(2023年2月1日)

 寒さが厳しさを増す中にも、ほんのりと漂い始める春の気配。草木も動物たちも、私達も、目覚めの季節へのウォーミングアップが少しずつ始まります。
 2月3日が節分、4日は立春。冬と春という二つの季節の分かれ目です。子供の頃、節分の日は、隣近所の家々から、大きな声で「福は内~、鬼は外~」「福は内~、鬼は外~」と、豆をまく元気なかけ声が聞こえてきたものです。これは、福は内(家)に入って来るように、鬼は外へ出で行くようにという意味ですが、集団心理を知ってからは、これを聞く度に「内集団嗜好性」を思い出し、「内は福~」「外は鬼~」と言いたくなります。

 社会心理学では、自分の所属している集団を「内集団」、所属していない集団を「外集団」と言います。そして、いったん「内集団」、「外集団」が明確になると、「内集団」には親しみと好意や一体感を感じ、「外集団」には防衛意識や警戒感、敵対心、ライバル心等の対抗意識等を持つようになります。

 始めての人事異動時や、入社前後の新人達には、これから入る新しい集団に対して、警戒心や不安感があります。誰もが持つ心理です。それは、未だその集団が自分にとっての「内集団」になっていないからです。だから、異動したての時や、入社したての時は、集団と自分とは未だ対立関係にあるのです。しかし、仕事の役割が決まったり、仕事を覚えてきたり、周囲とのコミュニケーションが取れてくると、警戒心と不安感が薄れ、次第に安心感や親しみが生まれ、集団と自分に一体関係ができてきます。
 その集団がインフォーマルな集団であればある程、この一体感は強くなります。サークルでカップルが生まれやすいのは、この内集団感情によって、集団メンバーに心を許す仲間意識が基盤にできるからです。
 新人の話に戻りますが、内集団に新しく入って来た新人を、いつまでもよそ者扱いしたり、差別(世代間の断絶等)をしていると、新しいメンバーは集団から離れていきます。
 現在、新人や若手社員の離職が問題視されていますが、指導者(管理職やリーダー)は勿論、働く人が知っておきたい集団心理です。
 
 小学校の運動会でも分かるように、普段は友達同士の子供達が、いくつかの集団に区分されると、それだけでこのような意識や感情が直ぐ生じます。これは、小学生だからということではありません。とにかく集団が区分されると、内集団を同一視し、外集団をライバル視する意識と感情が生じるのです。正に「内は福~」「外は鬼~」になっていくのです。
 この心理は、国家間でも、企業間でも、部課係間でも、サークル間でも同様です。これを「内集団嗜好性」と言います。この「内集団嗜好性」が自分の集団のメンバーに対する好意を高めるのです。
 内集団びいきは、認知バイアスという心理現象が起きていることから、無意識に出でしまうものです(アンコンシャス・バイアス)。気を付けたいことは、無意識で誰かを差別してしまうことです。避けなくてはなりません。そのためには、下記の点に留意しましょう。
 ☆自分と違う考え方を持っている人とも話す(年齢、性別、仕事、国籍が違う人、等)
 ☆自分がよく思っていない人たちのことも知る努力をする
 ☆自分の考えは、集団の考えにまき込まれていないか?等、自分に問いかけてみる
 常に自分の気持ちや考えを見つめてみることで、自分の心の中で起こっている無意識なバイアスに気付くことができます。まずは、自分(達)の中にバイアスがないか疑ってみましょう。

 当社は毎年スタッフと豆まきをします。私は「鬼」担当で鬼のお面を付け、社内をキャッキャッ逃げ回っています。スタッフはここぞとばかりに豆をぶつけてきます。
 今年は「福は内~、鬼も内~」かな?!「福は外~、鬼も外~」もあり?!

 さて、「一月は往ぬる、二月は逃げる、三月は去る」という言葉があります。一月から三月までの時期は、時間の流れが速く、あっという間に過ぎ去ることを喩えています。確かに、この時期、ぼーっとしてしまいがちです。お互い気合を入れて2月を過ごしましょう。

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植田亜津子

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