レター No.87「クオリティ・オブ・ライフ」(2020年12月1日)

クオリティ・オブ・ライフ

 1年の最終月となりました。皆様に於かれましては、お変わりなくお元気にご活躍の事と拝察申し上げます。
 ところで、皆様の好きな季節はいつですか? 
 私は晩秋が好きです。冬至に向かって、夕暮れが早くなっていく今の時季、気持ちが落ち着くのです。街を歩く人々は、足早に自宅に帰って行く。家々の窓からは、オレンジ色の灯りが見え、とても静かで温かく幸福感が伝わってきます。

 欧米を中心に注目を集めている「“HYGGE”ヒュッゲ」という言葉を聞いたことがありますか?「ヒュッゲ」とは、デンマーク人が大切にしている時間の過ごし方や、心の持ち方を表す言葉です。日本語でぴったりくる言葉は見当たりませんが、ほっとくつろげる心地よい時間、そんな時間を作り出すことによって、自然と生まれる幸福感や充実感、暮らしを楽しむ姿勢や、生き方といったようなもので、一言で表現するのは難しいです。
 
 日本は、物質的に豊かで、治安もよく、世界的に見ると恵まれている環境ですが、「今、自分はとても幸せ」と自信をもって答えられる人はどれだけいるでしょう!
 国連が150以上の国や地域を対象に行っている「世界幸福度調査」では、幸福度上位は常に北欧が占め、1位がフィンランド、2位はデンマーク、因みにG7諸国では、カナダ11位、英国13位、ドイツ17位、米国18位、フランス24位、イタリア30位、日本は62位です。最下位はアフガニスタンです。
 日本は調査項目の中で、「寛容さ」と「主観満足度」の値が低いのです。「寛容さ」とは、“1ヶ月以内に寄付をしたか”の問ですが、寄付文化の薄い日本では加点は難しいですね。“人生評価において楽しいか、辛いか”の「主観満足度」の問いに対しては、日本人は非常に低いのです。皆様はいかがですか?

 今回のレターは「幸福度」が高いデンマークの「ヒュッゲ」から「幸せのヒント」を学びましょう。

<「ヒュッゲ」に学ぶ「幸せ感」>

ヒント1・・・家族や友人との時間を大切にする
 デンマークの人々は、家族は勿論、友人や隣人との繋がりや絆をとても大切にしています。一人の状態で「ヒュッゲ」は無いとは言いませんが、仲間と共有する時間や、共感的空間から生まれる心地よさが「ヒュッゲ」に繋がるのです。
 コロナ禍の今は、気の置けない友人達とワイワイと集うことはNGですが、鍋を囲んだり、手巻寿司、お好み焼き等、日本にも、家族や友人達と楽しい時間の過ごし方があります。コロナ禍で、「おうち時間」が増え、家族と一緒の時を大切にするようになったことは、素晴らしいことです。

ヒント2・・・ 時間の流れを意識する
 デンマークでは、朝7時頃から働き、夕方16時頃には業務を終え、その後の時間を大切に過ごします。確かに、自分の時間に余裕があれば、心のゆとりも生まれ、時間の流れを大切にした生活が生まれます。
 日本のように仕事の拘束時間が長く、特に、家事や育児等に忙しい女性は、どうしても、時間に追われた生活になってしまいます。しかし、日本には四季(春夏秋冬)があり、それに因んだ風習や行事、例えば、1月は七草がゆ、2月は節分、3月はひな祭り、4月はお花見・・・等、その時々の行事を行うことで、季節の移ろいや、時の流れを肌で感じ、心が豊かになります。

ヒント3・・・無理をしない、見栄をはらない 
 デンマークの人々は、飾らない、気取らない国民性であると言われています。付き合えば付き合う程、フレンドリーに接して下さるそうです。“素の自分を見せることが、素の付き合いに繋がる”、という考えをもつデンマークの人々だからこそ、気軽にホームパーティができるのでしょう。
 人が集まる時は、「家を片付けないと」「お料理は何にしよう」等と思うのは、見栄でしょうか?ありのままの自分、分相応のお付き合い、そしておもてなしは、少し手抜きする位のほうが、ゲストも自分もリラックスしますね。

ヒント4・・・自然を身近に感じる
 冬が長いデンマークですが、その分、夏は思い切り外の生活を楽しむそうです。ピクニックやバーベキュー等、自然を身近に感じながら、「ヒュッゲ」の時を過ごします。
 日本人は元々、風流を好みます。春はお花見、秋はお月見や紅葉がり、冬は雪まつり等。時として、そこにお酒が入り、どんちゃん騒ぎ、“祭りの後の寂しさ・・”にならないような粋な楽しみ方が「ヒュッゲ」です。

ヒント5・・・物を大切にする
 デンマークの人々が、椅子を大切にすることは有名です。自分が一番リラックスする場所と物については拘り、例えば、椅子を捜すのにも時間をかけ、選び抜いた自分の椅子は大切に長く使います。気に入った物は、代々受け継いでいくという、物からも「ヒュッゲ」を感じることができます。
 私達の生活の中にもそういう物があるとよいですね。その物に触れた時の安心感、ふっと心が和む一瞬は、「ヒュッゲ」の時です。

ヒント6・・・心地よい空間づくり
 「ヒュッゲ」と言えば、キャンドルです! デンマークでは昼夜を問わず、キャンドルを灯す習慣があるそうです。キャンドルのほのかな明るさと温かみは、心地よい空間となり、食卓・リビング・寝室・玄関にも欠かせないアイテムです。
 日本で心地よい空間と言えば、私は、和室を思い浮かべます。畳の部屋は、今では贅沢なスペースです。裸足で感じる畳の感触、い草の香り、そこに、季節の生け花、いつでもごろんと横になれる場所、日本人だからこそ感じる心地よさ。和室がある方は、もっと和を楽しみましょう。

ヒント7・・・ミニマムに暮らす
 「ミニマム」とは、最小限ということです。必要な物を必要な分だけ、つまり余計なものは持たない。しかし、必要なものにはお金を惜しまない。一般的なデンマークの家の広さは、日本とほぼ変わらないそうですが、スッキリしているので広く感じるそうです。拘りのお気に入りの物に囲まれた家、確かに心地よい空間ですね。参考にしましょう。

ヒント8・・・手づくりのぬくもりを感じる
 デンマークは冬が厳しく長いことから、母親や祖母が、家族に手編みのセーターや靴下をプレゼントにするそうです。手作りならではのぬくもりや、温かさは、心を豊かにします。人と物との絆を大切に、着る物にまで「ヒュッゲ」スタイルが定着しています。

ヒント9・・・仕事に縛られない
 デンマークの人々は、ワークライフバランスが上手ですね。自分の仕事に誇りとプライドを持ち、自律的に働いているように感じます。
 デンマークは税金が高いけれど、社会保障が手厚く、医療費も無料、教育費も大学まで無料とか?女性の社会進出も、出産後の社会復帰も、ジェンダー平等の先進国であることも有名です。
 日本はG7の中でも、社会保障が充実していると言われていますが、デンマークと比べたらシビアです。「定年までに住宅ローンを返済しなくては!」「セカンドライフは年金+2000万円」等、現実的な課題があります!
 しかし、私たちが見習いたいところは、「朝早く出勤してはいけません!早く帰りなさい!」ではなく、「朝早くから仕事をして、早く帰宅する」。そうすれば、帰ってから時間を有意義に使えます。スマホやゲームで遊んでいるようではお話になりません!!

ヒント10・・・今あるものに感謝する
 デンマークの人々は、今あるものに感謝し、今の状況に満足することに長けています。厳しい気候の中で、家での過ごし方を工夫したり、日々の生活の中に小さな幸せを見つけて楽しむ、この姿勢こそが「ヒュッゲ」の最大のポイントなのですね。

 いかがでしたか?
 Letterを書きながら、「ヒュッゲ」の根底には深い精神性があり、その心のあり方が「幸福感」をクリエイトしているのだと思いました。また、自然や物に感謝したり、人間関係を大切にする、欲張らない身の丈の生き方は、一昔前の日本人の生活の中に自然にあったように思い、少し懐かしさも感じました。
 私自身、今まで日々の忙しさに追われ、仕事中心の生活をしてきましたが、コロナ禍、改めてワークライフバランスの大切や、“クオリティ・オブ・ライフ”や“マインドフルネス”について、考えるようになりました。「ヒュッゲ」な暮らしを取り入れ、日々の生活の中に「感謝」と「心の満足」を感じていきましょう。

 12月は、1年の締めくくりと、来年を迎えるための準備など、何かと気ぜわしい月ですが、充実感のある月でもあります。
 冷えると免疫力が下がりますので、身も心も温かくして、幸せな時間をお過ごし下さい。

LOVE
植田亜津子

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