レター No.77「ストレスに負けない『レジリエンス』の鍛え方」(2020年2月1日)

 現在、日本の企業は、国連からの勧告もあり「働き方改革」や「ダイバーシティ推進」等、職場環境の改善に取り組んでいます。しかし、職場でのストレスから離職したり、心の病から休職する人等の数は、国内で年間300万人以上と言われ、深刻な社会問題となっています。
 ストレスは仕事上だけでなく、日々の生活の中にもあります。そこで大切なことは、困難にぶつかった時に生じるストレスと上手に付き合うこと、問題が生じた時に一日も早く、前向きな気持ちを取り戻せることです。
 欧米では、学歴や知識・スキルよりも、ストレスに負けることなく、社会を生き抜く「レジリエンス」を重視して採用している企業もあるそうです。「レジリエンス」は先天的なものではなく、誰でも鍛えられスキルです。

 さて、「レジリエンス」とは何でしょう? 様々な日本語訳がありますが、ここでは「困難にぶつかっても、しなやかに回復でき、逆境を乗り越える力(精神的回復力)」と定義します。
 「レジリエンス」を鍛えることで、仕事の失敗や責任などでストレスがかかっても、心の健康を保ち、ストレスを自分の成長につなげる力が身に付くと考えられています。

 今回のレターは、「ストレスとうまく付き合い、逆境を“チャンス”に変える」ためのセルフマネジメント方法として、植田流「レジリエンス」の鍛え方を紹介します。少し長くなりますが、最後まで頑張って読んでください。

 (1)「感情をコントロールする」スキルを身に付ける ~失敗を成長のチャンスに変える~

 どんなにストレスフルな状況でも成果を出すビジネスパーソンは、自分の感情をコントロールするスキルを持っています。しかし、未だ実績を上げた経験が少ない若い世代や、キャリアチェンジの途中にある人は、仕事の失敗や責任の発生を重く受け止め、心が折れてしまいそうな時があります。そのような時は、自分の心の持ち方や物事の捉え方を変えてみます。「“感情や結果”は、“出来事”に対するあなたの“信念・考え方・思い込み”によって生み出される」という心理学の「ABC理論」を活用しましょう。

<A(Activating event)出来事> 上司に指摘された
<B(Belief)信念・固定概念>   私はダメな人間だ!上司から嫌われている
<C(Consequence)結果>     仕事を辞めたくなった、もう続けられない
 ↓

<A(Activating event)出来事>   上司に指摘された
<B(Belief)信念・固定概念>        私は上司から期待されている
<C(Consequence)結果>            指摘されたところを急いで直そう。頑張るぞ! 

 上記のように、悪い思考を持てば感情(結果)も悪いものになり、思考が良いものであれば、感情(結果)も良いものになるのです。
 感情は出来事(A)そのものが起因するのではなく、各々の固定観念(B)によって生み出された結果(C)であるという「ABC理論」です。
 自分の心の持ち方や物事の捉え方を変えることで、失敗を「成長のチャンス」に変えることができるのです!

 (2)「弱み」は「強みの原石」・・・自尊感情をもつ

 「弱み」と「強み」は表裏一体だとよく言われます。自分では「弱み」だと思っていても、他の人から見たら「強み」になることがあります。
 例えば、“自分は人見知りで、気軽に話をするのが苦手だ”いう「弱み」があったとします。しかし、それは慎重さの裏返しであり、気心の知れた相手となら良好な関係を長く継続できる、むしろ誠実さの証しという「強み」なのです。
 
 こう考えると自信が付きます! 自分の「強み」も「弱み」も含めて、ありのままの自分を受け入れましょう。自身で把握している「強み」と「弱み」のバランスを取ることで「自尊感情」が高まり、「レジリエンス」も鍛えられます。
 「自尊感情」とは、一言で言うと「“自分には価値がある”と感じる気持ち」です。
 「自尊感情」を高めるには、自分の「強み」を知ることが何より大切です。しかし、自分の「弱み」は直ぐ言えても、「強み」を言える人は意外に少ないものです。そこで「弱み」とは「自分を成長させるための要素」、「強みの原石」と捉えることができたら、自分の「強み」も自ずと増えていきます。

 (3)「自己効力感」をもつ

 主体的に何かに取り組み、自らの力で目標に向かっている時は「自分は上手くいっている」「私は達成できる」という感覚をもつことができます。これを専門的に「自己効力感」と言います。「自分の中に、困難・課題を解決する力がある」と思うことで、実際に困難なミッションに立ち向かう時に、前向きに取り組めるようになるのです。この「自己効力感」を高めるためには、次の2つのこと実践しましょう。

 ☆成功体験を振り返り、自分の成長を実感する
 これまでの経験を振り返り、「できるようになったこと」「上手くいったこと」を考えてみます。私はコーチング研修の中で、「自分の成功事例」のスピーチをしてもらいますが、とても効果的です。皆の前で発表することにより、改めて自分自身の成長を実感することができます。また、人の成功体験を聞きながら、自分も同じよう過去に沢山成功していた事に気づき、モチベーションが上がります。
 このように自分の成長を実感することで「成功体験の積み重ね」ができ、新しいミッションへの挑戦に対しても「私にはできる!」と自信を持つことができます。
 
 ☆「学ぶ」は「まねる」
 自己効力感を高めるための方法として、「モデリング」は有効です。モデリングとは、自分が真似したいと思うお手本(ロールモデル)を見つけ、その人の言動を真似ることで、その人と同じ結果を出すという手っ取り早いスキルです。
 「自分に必要なスキルを既に身に付けている人」をロールモデルにすることにより、よりモデリングの効果が高まります。

 (4)良好な「人間関係」が心の支え

 職場の人間関係は、メンタル面の一番のサポーターです。このことを知らない人があまりにも多過ぎますね。困難な状況に、必ずしも独りで立ち向かう必要はありません。周囲と良好な関係が築かれていれば、大きな助けが得られます。自分の中だけで「私はできる」と思うより、周りの人に「あなたならできるよ」と言われれば自信が付きます。
「One for All, All for One」に少し通じるところがありませんか?!
 良好な人間関係を築くポイントは「発信」と「傾聴」です。

 ☆自己開示と情報発信
 仕事で気兼ねなくコミュニケーションがとれるようになるには、まず自分をオープンにして仲間と接することです。「自分はこんな人間です」と周囲の人に知ってもらうことが先決です。 ベースには相手を思いやるマナーが必要ですが、たとえ世代が違っても、共通点があれば、親近感が湧き、相手との距離もグッと縮まります。必要以上に気を遣うことが無くなれば、コミュニケーションも活性化し、仕事やパフォーマンスが向上します。まずは、朝の笑顔の挨拶から!

 ☆相手の話を傾聴する
 こちらから一方的に話すだけでなく、相手の話をしっかり聴くことも同じくらい重要です。そこに必要なスキルが「傾聴力」です。相手に話しやすさを感じさせ、気持ちよく話をしてもらうためのスキルを身に付け、双方向のコミュニケーションを成立させましょう。良好な人間関係づくりにつながります。
<傾聴のポイント>
・表情を柔らかく ・相手の話をさえぎらない ・相づち ・ペースに合わせる

 最近感じている事は、人の話を先入観無しで聴くことがいかに大切かです。「私たちの時代は、○○で苦労した」的な、自分の価値観を押し付けるのではなく、“いま”活躍している人の話に耳を傾けることです。そうすることで、多様なものの見方を習得することができ、視野が広がります。

 如何でしょうか?上記4項目の中で、自分が無理なく実践できるスキルからチャレンジしてみましょう。ストレスとうまく付き合うことで、プレッシャーのかかる状況下でも、自分の目指す目標に向かって、道を切り開いていくことができます。
 多様性に柔軟に対応し、様々なストレスに負けないようにする力、「レジリエンス」は、世界中のビジネスパーソンに求められているスキルです。

LOVE
2020年2月1日
植田亜津子

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