レター No.30「ハイブリットな“お・も・て・な・し”」(2016年10月1日)

 「おもてなし」は英語では「hospitality(ホスピタリティ」と訳されます。辞書をみるともう一つ、「entertainment(エンターテイメント)」という単語を見つけることができます。それぞれの言葉には、それぞれ深い意味がありますが、私は、「☆ホスピタリティ=受け入れること、☆エンターテイメント=楽しませること」と、シンプルに捉えています。2つの単語は“日本流のおもてなし”と“西洋流のおもてなし”のニュアンスの違いを表しているように思います。

 “日本流のおもてなし”は「表無し」の文字どおり、表に出さないものです。相手の知らないところで、様々な準備をし、さりげなくしつらえ、お迎えするのが日本の美意識。「心地よく、気持ちよく、居心地いいね」と思っていただけたら成功。
 その原点には茶道の精神があると思います。茶の湯はまさに“おもてなしの心”で、客人を迎え入れるために、出入り口や部屋のお掃除(清め)、道具選び、掛け軸、花入れやそこに生ける季節ごとの花等、全てが客人をもてなすための意味をもって、しつらえます。
 
 それに対して、“西洋流のおもてなし”は、サプライズが付きもの、「エッ!ワッ!やられた!」という驚きや、「どう? 見て!」等と、華やかで相手を楽しませるサービス精神が根底にあります。「おもてなし」は社交の一つ、“一緒に楽しみましょう!”というパーティー文化が基本スタイルのように感じられます。
 ヨーロッパでは古来、広場やカフェ等、人が集まる場所から文化が発展していきました。そこに必要なのは、とにかく活気があることです。完璧なんて求めない、何か足りないことも楽しめばいい、というスタンスです。

 「日本流のおもてなし」「西洋流のおもてなし」どちらに軍配が上がる、ということではなく、どちらもあり。相手に合わせ、その2つを上手く使い分けたり、ブレンドできると「おもてなし」は洗練されていきます。
 因みに、私個人としては、仕事上(研修等)では、やり過ぎない接遇、引き算の接遇を追求しています。「お客様に不快感を与えない=心地よい」を目指していますが、プライベートではエンターテイメントを提供するようなサービス精神に溢れたおもてなしが大好きです。お客様と一緒に自分も楽しむという“ライブ感”ある西洋流が好みです。時として、サービス精神に溢れ過ぎ、やり過ぎを反省する時もあり、微妙なところですが・・・

 さて、ビジネスマナー・インストラクターの皆様は、日々、CS推進でサービス向上研修や“おもてなし”研修を実施されていることと思います。私自身、接遇(おもてなし)の難しさをとても感じています。形や型に走ることなく、相手をリスペクトする心の醸成が先です。自身の一番奥にある感情(思い)が行動に影響を与えるからです。
 応対者の知性と教養(学歴でない)が根底にないと真の“おもてなし”はできません。
 お客様へのホスピタリティが向上しないのは、相手を軽んじるような事務的な対応が減るどころか、残念ながら増えている現実が否めないからです。小さな言動が積もり積もって、とんでもない悲劇(問題)を起こさないよう、心がけましょう。

LOVE
植田亜津子

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